イコライザー(EQ)を効果的に使いこなすための考え方という記事では「EQは引き算」だと言いましたが、EQで音の成分のブーストはあまりおすすめしないのなら、音を太らせたいときにはどうすれば良いのでしょうか?

答えはアナログ回路を一旦通してからDAWに戻すことで肉付けしていくと良いと言えるでしょう。アナログ回路が手に入らないときにはテープシミュレーターなどのHarmonic Enhancers(エキサイターとも言う)を通すと良いでしょう。アナログ回路というのはMackieなどのアナログミキサーを通しても良いですし、カセットMTRなどの媒体を通しても良いと言えます。個人的にはヒップホップを作るのなら、カセットテープを通すのが最もおすすめです。

デジタル回路では波形はクリッピング(0dBを超えること)してはいけませんが、アナログ回路だと多少0dBを超えたところでビクともしないんですね。むしろ+3dBくらいはみ出して録音したところで、テープコンプがかかり音が良い感じに潰れ、古き良き時代のサウンドが手に入ります。ですから、アナログ回路を通すのは面倒臭いと感じたとしても、太いサウンドを手に入れたいのなら絶対にやった方が良いです。

ただ、どうしても「21世紀はミニマルな環境で音楽制作したいんだ!」という方は、下記の二つのプラグインを駆使して音楽制作するのもおすすめです。

Waves Kramer Master Tape

これさえあれば、カセットMTRを手放しても良いレベル。Record Levelノブでチューブ(真空管)サチュレーションをコントロールし、Flux Controlでテープサチュレーションをコントロールをすることにより、アナログ機材に過入力したときの音が簡単に手に入ります。「Link I/O」ボタンを外せば、Playback LevelをRecord Levelと独立してコントロールすることができるようになり、Playback Levelを独立的に変更することにより、真空管へのインプットレベルを上げずにテープサチュレーションの効果をコントロールすることが可能。

また、Reproduceモードにして真空管とカセットテープの両方を通った音を手に入れるか、Inputモードにして真空管は通してカセットテープは走っていない状態の音を手に入れるか(完全なるバイバスではない)を選択することができます。

Kramer Master Tapeはプリセットサウンドから選ぶだけでも楽しいですし、色々とパラメーターをいじっていくだけで偶然にも「やばい」サウンドが手に入ることがあります。非常におすすめできるテープ・シミュレーターです。

Waves J37 Tape

Kramer Master Tapeとは明らかにサウンドが違うので、Kramer Master Tapeのサウンドに飽きてきた頃に使うとすごくインスパイアされます。テープは3種類から選べますが、テープを変えることで劇的にサウンドが変わります。

SAT(SATURATION)を上げすぎると音が汚くなりすぎる感じがするので、SATレベルをなるべく上げずに、Tape Formula, Tape Speed, Input Level/Output Level, Biasのパラメーターを駆使して音作りするとやばいくらいにカッコいいサウンドができあがります。

個人的にはKramer Master Tapeよりも使いどころが難しいので、実験を重ねることで極めていくことができるテープ・シミュレーターです。ぶっちゃけ極めれば、Kramer Master Tapeよりカッコいい音が出せると思っています。このプラグインは実験が大好きなヒップホップマニア向けですね。

まとめ

デジタル全盛期でも「アナログ万歳!」とするパラドックスが存在するのです。なんとも不思議な世の中です。もちろん、アナログ機材を使って音を太くしていくのも良いですが、アナログ機材を揃えるのが難しい場合はWavesのテープシミュレーターが非常におすすめです。